2026.04.19
一年前になくした雨傘と出会えた。こんなことがあるのか。
長年行きつけの美容室がある。岡山県倉敷市の私の自宅から車で片道約十五分、そう遠くない
所にあり、手ごろな値段だし、女性店長が私の髪質や頭の形などをよくわかってくれて、いつも
きれいに仕上げてくれるので、気に入って通っている。
2025年(令和7年)8月のことだ。翌日から県外に出かける用件があり、ふと思いついて、
前回7月にも行ったばかりだったが、たまたま時間も作れたので、シャンプーブローだけして
もらおうと、その美容室に行った。いつもどおり手早くきれいにしてもらい、満足した。会計を済
ませて、預けていたバッグを受け取って、さあ、帰ろうとしたところ。
実は、前回7月にこの美容室でパーマをかけてもらったとき、私は店に忘れ物をしていた。
倉敷の中心市街地からは少し離れた田舎暮らしなので、日常の移動は、ほぼ自分が運転する車である。
7月のその日も、店には私の車で行った。
ちょうど雨が強く降っていたので、私には珍しいことだが、店の駐車場に停めた私の車から店の玄関まで、
白地で裾先にブルーの小花柄のある雨傘を差して店に入り、玄関ドア脇の傘立てに傘を置いた。
パーマには時間がかかる。終わって帰るころには雨がやんでいたので、その雨傘のことをすっかり忘れて、
置き忘れて帰ってしまった。その後、夜に帰宅してから初めて、そのことに気づいた。(しまった、どうしよう。)
店の閉店時刻は過ぎていたので、翌朝すぐ店に電話して、事情を話して、私の雨傘の特徴も話した。
「確かにおっしゃる傘は、店の傘立てにあります。どなたの傘かなあ、と話していたんです」と店長に言われた。
「多分、それは、私の傘です」と返答して、その日のうちに店に行った。
店の傘立てを見たら、白地にブルーの小花柄の、見覚えのある私の雨傘がある。やはり私の雨傘だった。
「わかりました。どうぞ、お持ち帰りください。持ち主がわかってよかったです」と、言ってもらい、
無事受け取れて、手元に帰ってきてほっとした。
翌月8月に店を立ち去ろうとする際、「本当に、あのときはお世話になりましたね」と、前回
7月の雨傘の忘れ物のことを話題に出して、何気なく、玄関ドア脇の傘立てに、ふと目をやると。
何と、傘立ての隅に、多分長い間置き忘れられたまま、立てかけられている数本の雨傘のうち、
見覚えのある雨傘が1本あるではないか。(あれっ、まさか。ちょっと、待って。)
ちょうど1年前の今ごろ、私がなくした雨傘だ。
全体が薄いピンクの上品な花柄で、開くと内側の骨組みも白いワイヤーが美しい花の輪郭になっている、
お気に入りの傘だった。
(以下、略)
~「あとがき」より、一部引用始まり~
「春はあけぼの」枕草子の冒頭です。もう言葉はいりません。口にするだけで温かくなります。
私たち岡山県エッセイストクラブにも春がやってまいりました。
作品集『位置』第二十四号には会員八十人のうち五十四人から玉稿が寄せられました。作品の内容はさまざまで、青春の思い出、
普段の生活の中で見つけた小さな幸せ、家族への感謝、旅行記。反戦の作品もありました。
よくぞの思いです。ペンの力を信じましょう。こうして形の違う布が同じ色の糸で繋がって大きなパッチワークが出来上がった。そんな気持ちです。
(以下、略)
~一部引用終わり~
岡山県エッセイストクラブ(OEC)作品集
『2026 位置 Position 第24号』(A5判、184P、全十章(54編))
2026年4月1日発行
発行 和光出版(岡山市南区豊成)
印刷 昭和印刷株式会社
編集 岡山県エッセイストクラブ
(※恐れ入りますが、岡山県エッセイストクラブ(OEC)のホームページは諸般の事情により、
2026年、年内で、休止することがOEC理事会にて決定されました。
長らくご覧いただき、誠にありがとうございました。)
定価 Ⅰ,320円(本体1,200円+税10%)
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気になる点はお気軽にご相談ください。