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寄稿文 掲載

「おかやま労働」 2005.8月号 (岡山県産業労働部労政・雇用対策課 2005年8月15日発行)
        
久本恵子   「人は変わるもの 〜若年者就業支援の相談現場から〜」


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「人は変わるもの 〜若年者就業支援の相談現場から〜」



 私は、延べ17年間の一般企業勤務を経て、2002年、個人事業を立ち上げました。

経営理念は、文書作成総合プロデュース。「文書による自己表現」 を通じて一人ひとりの個性と能力の発揮を
お手伝いします。具体的な事業内容は、自分史作成支援事業とキャリア・アドバイス事業。前者は、書きたいけれど
書けない人へ、後者はキャリア形成の節目で立ちどまっている人への支援となります。どちらも、「書く」ことを核にした
サポートを特徴としています。自己表現には様々なスタイルがあると思いますが、私は、自己のモヤモヤする思いや
無意識の感情を、意識化して明文化する「書く自己表現」に限りない喜びを感じるタイプで、多くの人に、この喜びを
体感いただきたいという思いが根っこにあります。

 現在、私は、いわゆる若年者就業支援の相談現場で、大勢の若い人たちから相談を受けています。若年離職者
といわれる層が大半ですが、在学中の学生や、学卒未就職の人、在職中ながら転職を考えている人も訪れます。
キャリア形成支援現場で長年ご尽力されている諸先輩方に比べれば、まだまだ少ない実績で恐縮ですが、日々
感じたことを少しお話したいと思います。
 若年離職者といっても、状況は様々です。実際に何年も職についたことのない人もいます。学卒時点での
新卒採用に見切りをつけて、アルバイト職や派遣社員の道を選び、数社を経験、二十代後半になって、そろそろ
正社員になりたい、なるにはどうしたらよいかと悩む人、何の仕事をしたらよいかわからない人、何社受けても落ちて
困っているという人もいます。

 私は、初めて相談者に会うとき、一番に、その人の基本的な人間力のようなものを見ます。実践的・具体的な
情報提供をするだけで、「何から始めればよいか、よくわかりました。すっきりしました」と元気よく話す人や、
パソコンによる若年者向け職業適性診断を受けて、「ヒントになった」と喜んで帰る人もいます。でも、そこまで気持ちが
整っていない人も大勢います。

  全面的受容・共感的理解・自己一致を原則に、相談にこられた人の状態をよく見て、その人のテンポに合わせる
ことが大事です。現実的な問題に関する助言が欲しい人には、具体的に次々と話を進めても問題ありませんが、
情緒的な問題を抱えている人には、その前にやることがたくさんあります。相手の沈黙もじっと待ちながら、じっくりお話を
聞きます。時には涙という場面もありますが、静かに自分の内面に向き合ってもらい、自分なりの整理をして
もらえるよう心がけています。

  ちなみに、キャリアという言葉は、国家公務員上級職とか特別華やかな職業経歴だけをさすわけではありません。
人の一生の、仕事を中心にした足跡と積み重ね、過去があり現在があり、未来に続くもの、と私は解釈しています。
また、キャリア・カウンセリングとは、あくまで、健康な人の、仕事に関する一時的な問題に取り組むもので、いわゆる
心理療法のカウンセリングとは異なる、ということをつけ加えておきます。

 変化の激しい現代、節目を迎えた時に自分のキャリアを積極的にデザインするためには、「自己理解」と「仕事理解」
の両方が必要といわれています。「自己理解」とは、仕事を軸に、自分は過去どんなことを経験して、何を喜びと思ったか、
苦痛と思ったか。興味・能力・価値観はどうか。蓄積した知識・技術・ノウハウはどういったものか。強みや弱みなど。
これらを整理して改めて知るというもの。一方、「仕事理解」ですが、人は、見たことも聞いたこともない、なじみのない職業
だと、その仕事についた自分がイメージできません。断片的な情報や偏った知識では、狭い視野での誤った判断しか
できない。業界・職種・企業についての学習が必要です。インターネットなどの受け身情報と、自分の足を運び直接人から
聞く人肌の情報、両方が必要だと思います。広範で正確な知識を得ることにより選択肢が広がります。

 自分の個性と能力を伸び伸び発揮して仕事をする、社会とつながって生きることは、人として確かな喜びの一つだと私は
思います。人は、少しのきっかけと自発的な意志の力で、何歳になっても変わるものではないでしょうか。
そう信じて、今後も精進を重ねながら、精一杯キャリア形成支援の仕事を続けていきたいと思っています。

                                                            
  久本 恵子